その1                        「ブラックジャック」
麻酔でぐったりしているミニジェニ。
子供の歯を抜いているのは、かおる先生。コロリ コロリと取れていく。
さっきの麻酔の注射をうつより、随分簡単そうだ。

注射をうつ時の、あの暴れようといったらもう。手も足も顔も取れちゃうくらい暴れた。
麻酔の力はすごい!あのミニデビルをあんなにくったりおとなしくさせてしまうのだ。

私は一部始終見守る事にした。
今の私といったら、舞台の袖でアイドルを見守るステージママの気分である。

抜歯が終わり、本番、医院長ボクタマ先生に交代する。
スルリと気管チューブが入れられ、いよいよ夢の手術の始まりである。
こんなにじっくりミニジェニの口の中を見たのは初めてで、亀裂のすごさにあらためて、彼女を不敏に思う。
こんなに普通と違う口の中で、よく8ヶ月間食事をとってきたものだ。
いつも、鼻も胸も前足までもベタベタにぬらして、冷えてしまって震えていた。それが乾いてカリカリになった時、痒かったりしたのだろう。

鼻水やだ液やごはんが逆流しないよう、いつもペリカンのように眠っていた。
ミニジェニ式睡眠法である.
自然とあのポーズを身につけたのだろう。

小さな口の中は、前歯の所までまっすぐに割れている。のどの方はつながらず、二股に分かれていた。
のどの付近から手術は始められた。眼の手術をする時に使う針と糸で少しずつだが確実につなげられていく。ミクロの世界だ。口の中は狭く針の回転がとても難しい。

ミニジェニはピクリとも動かず眠っている。
素人なりに心電図や脈拍は画面を見て理解できる。

医院長のヘルプについているかおる先生。作業を読み取り、気の効いたヘルプぶりである。
抜歯の時からずっとずっと同じポジションでミニジェニを固定させているあーこ先生。ずっと同じ体勢で、しんどさと戦っている。

残すはど真ん中で前歯の所まで割れた箇所である。
止血しながら少しずつ進んでいった・・・

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